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読書感想文:フォークナー「響きと怒り」

 フォークナーが自著の中で最も愛した作品ということで手にした。……読みにくいなんてものではない。目眩を起こしそうな文章を半ば無理やり読み進めていった。が、三章を終えるくらいから本が手から離れなくなった。四章を読み終えると小説の持つ世界観と時間性の懐の深さに驚愕した。最後の付録「コンプソン一族」でフォークナーの小説世界の住人に対する愛をヒシヒシと感じた。

 キャディのヒロイン性云々はさておき、ジェイソンがただただかっこいい。愚かな家系を呪い、その血への抵抗に全精力を尽くす生の意志。退廃的なのではなく、ある種達観的な理性をもって家を動かし、逃げることのできない運命に最後まで抵抗する。そこに善悪なんてものは存在しない。運命からの解放を望みひたすら合理的に、しかし泥臭く動く様にどうしようもなく憧れてしまう。ここでは女性や黒人は無力だが、彼らもまた運命を自覚しながらそれに従う存在なのであり、哀愁を感じずにはいられない。そしてフォークナーは彼らを深く愛した。 ディルシー。彼らは耐え抜いた。

 

響きと怒り (上) (岩波文庫)

響きと怒り (上) (岩波文庫)

 
響きと怒り (下) (岩波文庫)

響きと怒り (下) (岩波文庫)